Sunday, August 4, 2013

松尾芭蕉 '俳句'

山路(やまじ)きて 何やらゆかし すみれ草

春の山道をいてきてふと道のかたわらに目をやると小さなすみれの花がさいている。その色形がつつましく何とも心ひかれることだ。 
「ゆかし」=心が引かれるおくゆかしい、という意味。季語:すみれ草(春)

秋深き 隣(となり)は何を する人ぞ

秋が深まり野山がどことなくさびしく感じられるようになると、人しくなり隣人のことなどがになってくる。
・・・ぞ」は疑問。季語:秋深き(秋)

荒海や 佐渡(さど)とう 天の川

荒れ狂う日本海の荒波の向こうには佐渡ケ島がある空を見上げると、白く美しい天の川が、佐渡の方までのびてたわっていて、とても雄大だ。
季語:天の川(秋)

梅が香に のっと日の出る 山路かな

早春の山道をいていると梅の香りにさそわれるかのように、太陽がのっという感じで顔を出した 
春の喜びを味わっている。季語:梅(春)

(きく)の香(か)や 奈良には古き たち

菊の香がただよう奈良のまち。その香りの中に古い像たちがひっそりとたたずんでいる 
季語:菊の香(秋)

五月雨を 集めてはやし 最上(もがみ)

降りく五月雨を集めて、最上川はまんまんと水をたたえ、ものすごい勢いで流れていることだ 
最上川は山形県にあり富士川球磨川とともに日本三大急流の一つ。季語:五月雨(夏)

(しず)かさや 岩にしみ入る (せみ)

あたりは、ひっそりとまり返って物音一つしない。そのかさの中で鳴き出したせみの岩にしみ入るように感じられることだ。 
かさ」ではなく、「閑かさ」と表現してさびしく物かな情景を調している。季語:(

旅に病(や)んで 夢は枯(か)れ野を かけめぐる

旅の途中でたおれて床にふしていても、夢の中で心は枯れ野をかけめぐっている。 
季語:枯れ野(冬)

夏草や つわものどもが 夢の跡(あと)

かつて場だったこの地にてみると、功名を競った義や藤原氏一族の夢のあともなくただ夏草がしげっているばかりだ。 
「つわものども」は、勇ましい武士たちのこと。季語:夏草(夏)

初時雨(はつしぐれ) 猿(さる)も小蓑(こみの)を ほしげなり

山中で時雨が降ってきた。冷たい時雨にぬれる猿のすがたは、小さい蓑をほしがっているようだ。
「小蓑」は、今で言うかっぱのこと。季語:初時雨(冬)

古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音

古池にとつぜんかえるが飛びこんだその水音が一瞬あたりのけさを破ったがまたすぐもとのけさにもどった。ほんとうにかだ 
「かわず」=かえるの古い言い方。季語:蛙(春)

ほろほろと 山吹(やまぶき)散るか (たき)の音

ごうごうと音をたてて落ちるのひびきにさそわれるかのように、山吹の花びらがほろほろと散り落ちることだ 季語:山吹(春)

名月や 池をめぐりて 夜もすがら

空には名月があり池にも月影がうつっている。その美しさに心を奪われて、池のまわりをきながらながめているうちに、つい一夜を過ごしてしまった 
季語:名月(秋)

六月や 峰(みね)に雲置く 嵐山(あらしやま)

夏、嵐山の上に入道雲がもくもくと立ち上がっている。力さを感じる嵐山の夏景色もいいものだ。
季語:六月(夏)